2013.03.13

朝鮮学校を高校無償化制度の対象から除外することに反対し、 速やかに同制度が適用されることを求める会長声明

  1. 政府は、本年2月、公立高等学校等に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(以下「高校無償化法」という)2条1項5号に関する同法施行規則を改定し、いわゆる朝鮮学校が同法の「就学支援金」の支給対象となる根拠規定を削除した。
    平成24年12月28日の下村博文文部科学大臣の定例記者会見によれば、上記改定は、拉致問題の進展がないこと等を理由としたものである。
  2. しかし、そもそも朝鮮学校で学ぶ個々の生徒にも教育を受ける権利が保障され(憲法26条)、この権利享受の点で差別的取り扱いをすることは許されない (憲法14条)。そして、「拉致問題」はもっぱら政治的・外交的事由であって、本来的に、朝鮮学校で学ぶ生徒がその帰趨を左右し得るような次元のものでは全くなく、他の同種学校と異なる取り扱いをする合理的理由となり得ないことは論を俟たない。
    加えて、子どもの権利に関する条約(子どもの権利条約)は、締約国に対し、その管轄内にあるすべての子どもに教育への権利を保障し(同条約2条1項、28条1項)、特に、種々の形態の中等教育の発展を奨励し、その利用の機会が得られるよう無償教育の導入や必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとることを求め(同条項b)、且つ教育が指向すべきなのは文化的アイデンティティや居住国及び出身国の国民的価値の尊重と定めている(同条約29条1項c)。高校無償化法はこの条約規定の具体化であるべきで、そうすると、同法の対象の範囲については、外交上の配慮などからではなく、もっぱら教育についての子どもの権利の観点に基づき確定されるべきが相当である。
  3. しかるに、政府は、拉致問題の進展がないこと等の政治的外交的事由に基づき 朝鮮学校を制度対象から除外し、そこで学ぶ生徒に就学支援金受給の道を閉ざしたものである。
    したがって、本件の施行規則改定は憲法26条及び同14条に違背するとともに子どもの権利条約28条及び29条の趣旨に悖るといわねばならない。
  4. よって、当会は、朝鮮学校を高校無償化法上の制度対象から除外した今回の改定に遺憾の意を表すとともに、政府に対し、改めて同制度が朝鮮学校に適用されるよう求めるものである。

以 上

2013(平成25)年3月13日
埼玉弁護士会会長  田島 義久

戻る