2013.05.23

共通番号法案の成立に反対する会長談話

  1. 本年5月9日,「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」案(以下「現法案」という。)が衆議院を通過し,翌10日以降参議院で審議されることとなった。
    当会では,昨年8月9日,「社会保障・税共通番号制度創設に反対する会長声明」において,当時の民主党政権において国会提出された法案(以下「旧法案」という。)につき,それが抱える重大な問題点・危険性に対する改善・防止策がおよそ不十分である等として,その成立に強く反対する意見を公表した。
    現法案も,すべての国民と外国人住民に社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号を付し,これらの分野の個人データを情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(共通番号制度)を創設しようとするもので,基本的には旧法案と同様の内容となっている。
  2. 具体的にいえば,医療,介護,障がい,収入,年金など個人の生活のおよそ全般にわたる極めてセンシティブな内容が含まれる諸情報を,共通番号によって名寄せし統合することを極めて容易とし,ひいては国家が一人ひとりの個人を監視の対象とすることを可能とするものである。まさに,憲法13条が保障する個人の市民生活の自由やプライバシーの権利に対する重大な危機といわざるを得ない。
    また,こうして集積された個人情報漏洩も強く危惧され,このような事態が生じた場合,広範な情報流出により当該個人は回復し得ない程の損害を被ることとなる。さらに,同種制度を持つアメリカ,韓国等では,共通番号を悪用した「なりすまし」による被害も報告されている。
  3. のみならず,現法案では,基本理念として「行政事務以外の事務処理において個人番号カードの活用が図られるように行われなければならない。」(第3条第3項)とまで規定している点は到底看過し得ない。そして,現法案の附則では3年を目処として「個人番号の利用及び情報提供ネットワークシステムを使用した特定個人情報の提供範囲を拡大すること並びに特定個人情報以外の情報の提供に情報提供ネットワークシステムを活用することができるようにすること」などの検討までも行うものとしている(附則第1条)。
    これらは,共通番号と情報提供ネットワークシステムを,行政分野のみならず,民間分野でも広く利用できるようにすることを目指すものであり,現法案には旧法案より一層深刻な問題点・危険性が含まれているのである。
  4. よって,当会は,現法案の成立に強く反対するものである。

以 上

2013年(平成25年)5月23日 埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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