2013.06.12

死刑執行に対する抗議声明

当会は,政府(法務省)に対し,本年4月26日の東京拘置所における死刑確定者2名の死刑執行につき厳重に抗議する。これまで繰り返し当会は,政府(法務省)に対し,死刑の実態等に関する十分な情報を広く開示するとともに,これに基づいた死刑制度廃止に向けた全社会的議論が尽くされるまでは少なくとも死刑を執行しないよう強く求め続けてきた。このような中で行われたこの度の死刑執行は,到底容認し得ない事態である。
いうまでもないが,1989年に「死刑廃止条約」が国連で採択された以降,今日に至っては死刑制度の廃止こそが疑うことなき国際的潮流となっている。
また,この間,日本政府は,国連人権関係諸機関より,再三にわたって死刑執行を停止すべき旨や死刑廃止に向けての措置を採るべきことの勧告を受け続けている。中でも,2008年10月の国連(自由権)規約人権委員会の総括所見における「世論調査の結果にかかわらず,締約国は,死刑廃止に向け前向きに検討し,必要に応じて国民に対し廃止が望ましいことを知らせるべき」旨の勧告はとりわけ重要である。しかるに,日本政府にはこれら諸勧告に従った動きはなく,国際協調主義を基調とする日本国憲法に照らし極めて不適切である。
加えて,日本弁護士連合会は,2011年10月7日開催の人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し,さらに本年2月12日には,谷垣法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。
以上のような状況に対し,政府は何ら対応することなく谷垣法務大臣が再度の死刑執行を行ったものであり,まさに信じがたい暴挙といわねばならない。
よって,当会は,政府及び国会に対し,改めて,死刑廃止に向けた全社会的議論を尽くすこと及びそのための施策策定を求めるとともに,特に法務省当局に対してはかかる議論集約が十分にできるまで再び死刑を執行することなきよう重ねて強く求める。

以 上

2013年(平成25年)6月12日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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