2013.08.20

改めて司法修習生の給費制復活を求める会長声明

平成25年7月16日、政府は法曹養成制度検討会議(以下、「検討会議」という。)の意見等を踏まえ、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下、「関係閣僚会議決定」という。)を公表した。
「司法修習生に対する経済的支援」の在り方について、①実務修習開始時における転居費用の支給、②司法研修所通所圏外の修習生について全員入寮できるようにすること、③休日の法科大学院等での教育活動等の限度で兼業許可基準を緩和することなどを内容とした経済的支援策を67期の司法修習生に対して可能な限り実施するとしている。
しかし、これらの措置は、現在の貸与制度を前提とする「司法修習生の経済的支援」としても応急措置的なものにすぎないし、とりわけ③の兼業許可基準の緩和は、フルタイムで密度の濃い修習に励む司法修習生にとって何ら支援策とならない。そればかりか、修習の実をあげ、国民の権利を擁護する質の高い法曹を養成するために必要不可欠な修習専念義務を骨抜きにするおそれがある。
そもそも司法修習制度は、三権の一翼を担う司法の分野で国民の権利擁護のために不可欠な人材を、法曹一元の理念のもとで養成する法曹養成制度の根幹をなすものである。したがって、司法修習生の給費の負担は、単なる司法修習生に対する経済的支援の問題ではなく、本来的に国家が担うべきものなのである。だからこそ、司法試験に合格した者に対する司法修習は、単なる研修ではなく、修習生が国民の権利擁護に直接関わりを持つ司法実務に直接携わることを内容としているのであり、そのような実務に携わる司法修習生の身分も保障されなければならない。貸与制は、司法修習のこのような側面を完全に無視する制度である。
さらに、貸与制は、法曹人口の劇的増加に伴う就職難、OJTの機会の喪失、法科大学院の多額な学費負担とともに、法曹志願者減少の大きな要因ともなっており、多様で能力の高い法曹の養成の障害となっている。給費制の復活は、これ以上の法曹志願者の減少を食い止めるために直ちに執るべき対策である。
まして、本年4月及び5月に募集されたパブリックコメントにおいては、法曹養成課程における経済的支援に関する意見数は2421通にのぼり、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである」との内容であった。同時に、検討会議では複数の委員から給費制を復活すべきとの意見が出された。上記閣議決定は、これら国民の声を無視するものである。
当会は、貸与制を前提とした「取りまとめ」及びこれを是認した関係閣僚会議決定に抗議するとともに、政府が新たな検討体制においてパブリックコメントの結果を反映させて司法修習生に対する給費制を復活し、現在の法曹養成制度の問題の抜本的解決に向けた具体的な施策を速やかに検討し実現するようあらためて強く求める。

以 上

2013年(平成25年)8月20日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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