2013.08.20

オスプレイ配備の中止及び日米安保条約及び 日米地位協定等の見直しを求める会長声明

  1. 昨年10月,沖縄県の米軍普天間飛行場に垂直離着陸輸送機オスプレイ(MV22)が配備された。それ以来,沖縄ではその低空飛行訓練が続けられ,本年3月からは四国でも始められた。さらに,本年7月末にはオスプレイ12機の追加配備が行われた。これらの飛行訓練ルートは、今後全国各地で少なくとも21県138市町村の上空に拡大される予定となっている。しかも,このように拡大される各ルートに到達するまで、全国のさまざまな場所の上空を飛行することが不可避となる。つまり,オスプレイの配備と飛行訓練は日本全土に係る問題である。
  2. オスプレイは、開発段階のみならず量産態勢に入った以降も事故が絶えない危険なものと指摘されている。実際,強行配備された昨年においても,その4月と6月に相次いで墜落事故が発生していることを米国側提供情報として防衛省自身が公表している。
    オスプレイは,回転翼機モードから固定翼機モードへの切り替え時の不安定さについて構造的問題のあることが専門家より指摘されているほか,航空法11条が安全な飛行のために備えるべき機能として義務付けているオートローテーション機能(エンジン停止時に安全に着陸するための回転翼の自動回転能力)が欠落していることも指摘されている。しかも,オスプレイは,地上60メートルという低空飛行訓練を行う場合があることを政府の国会答弁で認めているが,航空法が定める最低安全高度(人口密集地300メートル,それ以外150メートル)を大きく下回る極めて危険な飛行計画である。
    このように構造的にも現実的にも極めて危険なオスプレイが,沖縄をはじめ全国各地を低空飛行訓練するということは,この国に生きるすべての人が生命・身体等を害されることなく平和のうちに安全に生きる権利の確保という見地から到底容認できない。
  3. しかるに政府は,沖縄をはじめ各地で多くの反対意見があるにもかかわらず,オスプレイ配備やその後の低空飛行訓練について何ら問題とする姿勢を示さない。
    そればかりか,従前より米軍は,オスプレイ以外の軍用機の飛行訓練を日本領土内に同様のルートを指定して実施してきている。そして,訓練ルートに指定されていない地域の上空も「基地間移動」との口実で事実上自由に飛行してきている。
  4. 以上のような事態は,「日米安保条約」に基づく「日米地位協定」の実施に伴う航空法の特例に関する法律により,米軍には航空法の定める航空機の安全装置や最低安全高度等運航上の安全確保のための多くの条項が適用除外とされていることによる。日本の領土内における米軍の行動に対し日本の安全確保のための主権行使が大幅に制約されているのであり,このような対等性及び平等性に著しく欠ける不合理な日米地位協定体制にこそ根本原因がある。
  5. よって,当会は,政府・国会に対し,オスプレイ配備の撤回を米国政府に申し入れ実現させるとともに,平和的生存権の保障と非武装平和主義を基本原理とする日本国憲法に照らし,日米安保条約に基づく日米地位協定の不平等性及び不合理性並びに航空法の特例に関する法律による安全確保規定の適用除外等につき早急の見直しを求めるものである。

以 上

2013年(平成25年)8月20日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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