2013.09.19

死刑執行に対する会長声明

本年9月12日、東京拘置所において死刑確定者1名に対する死刑が執行された。死刑廃止に向けた全社会的議論とその集約までの間の執行停止を求め続けてきた当会としては、極めて遺憾であり厳重に抗議する。
いうまでもなく、死刑廃止は国際的趨勢である。1989年の国連総会における「死刑廃止条約」採択以降、死刑廃止国は増加の一途となり、最近では、死刑廃止国が140か国(事実上の廃止国を含む)であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。また、国連総会においては、2009年12月に死刑執行の停止を求める決議が採択され、さらに昨年12月20日には死刑廃止を視野に執行を停止することを求める決議が111か国もの賛成多数で採択されている。
他方で、この間の日本政府は、国連人権関係諸機関より再三にわたり死刑廃止に向けての措置を採るべきことや死刑執行を停止すべき旨の勧告を受け続けている。2008年10月には、国連(自由権)規約人権委員会が「世論調査の結果にかかわらず、締約国は、死刑廃止に向け前向きに検討し、必要に応じて国民に対し廃止が望ましいことを知らせるべき」旨を勧告した。さらには、本年5月31日発表の「拷問等禁止条約」の実施状況に関する第2回日本政府報告に対する総括所見において国連拷問禁止委員会は、「死刑を廃止する可能性を検討すること」として、明確に死刑の廃止について勧告していたのである。しかるに、日本政府にはこれら諸勧告に従う動きは全くなく、国際協調主義を基調とする日本国憲法に照らしてもその姿勢は強く非難されなければならない。
加えて、人権擁護活動に関する弁護士・弁護士会の叡智の結集である日弁連人権擁護大会は、2011年10月7日「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択している。この宣言を踏まえ日弁連は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。そこでは、かかる全社会的議論のための方策として、偏りない人選による有識者会議を設置して死刑制度に関する世界情勢につき調査・検討等したうえ今後の同制度の在り方について結論を出すことやその間すべての死刑執行を停止すること等を求めていた。
以上のような死刑を巡る状況のもとでの本年4月に続く今回の執行であり、その問題性は筆舌に尽くしがたい。よって、当会は、政府及び国会に対し、改めて、死刑廃止に向けた全社会的議論を尽くすこと及びそのための施策策定を求めるとともに、特に法務大臣にはかかる議論の集約ができるまで再び執行しないことを改めて強く求める。

以 上

2013年(平成25年)9月19日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

戻る