2014.04.28

司法試験予備試験の受験資格制限等に反対する会長声明

  1. 司法試験予備試験(以下,「予備試験」という。)は,法科大学院を経由しない者にも法曹への道を確保するという目的のもと2011年から実施されている。
    同年の予備試験合格者116人のうち85人が翌2012年の司法試験を受験し,58人が合格(合格率68.2パーセント)し,続く2013年の司法試験では予備試験合格者の合格率が71.9パーセントまで上昇した。この予備試験合格者の高い司法試験合格率は,約25パーセントにとどまる法科大学院修了者のそれを圧倒するものであった。その結果,志願者数の下落を続ける法科大学院に対し予備試験の出願者数は増加の一途を辿っている。
  2. この現実を目前に突きつけられた法科大学院関係者をはじめとする一部の法曹実務家や国会議員からは,「予備試験はあくまで例外的な制度である」という前提のもと,「法科大学院大学生,学部在学生,25歳以下の者には予備試験の受験資格を認めるべきではない。」,「予備試験合格者の司法試験合格者数を制限すべきである。」などといった提言が行われるようになり,実際に法曹養成制度改革顧問会議における議論のなかでは前記提言を肯定する発言もみられる。
  3. しかしながら,以下の理由により,予備試験について受験資格制限を設け,あるいは合格者数を人為的に制限する提言を容れることはできない。
    基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする法曹,その担い手を選抜する司法試験にあっては,年齢・学歴・財産といった種々の差別要因を可能な限り排除し,その門戸を万人に対し等しく開くべきである。このことが実践されていた旧司法試験にあっては,合格率が2~3パーセントという狭き門であったにもかかわらず,毎年3万人を超える志願者を集めていたのである。
    このことを考えた場合,法科大学院志願者の激減という事態は,多大な金銭的・時間的犠牲を負って法曹資格を得ても弁護士としての就職がままならない,あるいは弁護士として稼働しても満足な収入が得られないという弁護士人口の激増が招いた現状に起因することは明らかであり,その原因を予備試験制度に求めるのは誤りというべきである。予備試験に対する制限は,かえって法曹志願者の激減に拍車をかけ,法曹の質を低下させるものといえる。
    また,予備試験の受験資格や予備試験合格者に対する司法試験合格枠に対する人為的な制限は,法の下の平等(憲法14条1項),職業選択の自由(憲法22条1項)に違反する可能性も極めて高いといえる。
  4. この点,政府見解のなかでは,新司法試験においても旧司法試験と同様に誰でも受験できる開かれた試験としての性格が維持されるべきであること,法科大学院制度と予備試験制度は原則・例外の関係に立たないことがそれぞれ繰り返して確認されている。
    そして,当弁護士会もまた,2013年2月23日に「法曹養成に関する決議」を採択し,そのなかで司法試験の受験資格から「法科大学院課程修了」を削除することを求め,司法試験のあるべき姿の回復を訴えた。法曹を志す者が自由かつ平等に司法試験にのぞむこと,その条件が維持されていることが我が国の司法制度の根幹をなしているものと確信しているからである。
  5. よって,「予備試験について受験資格制限を設け,あるいは予備試験合格者の司法試験合格者数を制限すべきである」という提言に対し強く反対する。

以 上

2014(平成26)年4月28日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

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