2014.07.09

死刑執行に対する会長声明

本年6月26日,大阪拘置所において死刑が執行された。当会は,かかる死刑執行に対し,厳重に抗議する。
1989年に「死刑廃止条約」が国連で採択されて以降,今日に至っては死刑制度を廃止することが国際的な潮流となっている。このことは,2013年12月末の時点で,死刑を法律上・事実上廃止している国が全世界の70%である140カ国に及んでいることからも明らかである。このような国際的な潮流のなか,政府は,国連人権関係諸機関より,再三にわたって死刑執行を停止すべきであること,死刑廃止に向けての措置を採るべきことの勧告を受け続けている。
さらに,本年3月27日には,静岡地方裁判所が,袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する旨の決定をした。同決定によって,改めて,死刑制度の問題点が浮き彫りになり,今後,死刑制度に関する全社会的議論が期待されるなか,同決定からわずか3か月しか経過していないにもかかわらず,この度,死刑が執行されたものである。
これまで,日本弁護士連合会は,2011年10月7日開催の人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し,さらに2013年2月12日には,谷垣法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。
また,当会も,繰り返し,政府及び国会に対し,死刑の実態等に関する十分な情報を国民に広く公開するとともに,広く公開された情報に基づいて死刑制度廃止に向けた全社会的議論が尽くされるまでは少なくとも死刑を執行しないよう強く求めてきた。
以上のような状況のもとで,死刑が執行されたことは,到底,容認しえない暴挙といわねばならない。
これまでも度重ねて求めているが,当会は,政府及び国会に対し,改めて,死刑廃止に向けた全社会的議論を尽くすこと及びそのための施策策定を求めるとともに,特に法務省当局に対してはかかる議論集約が十分にできるまで再び死刑を執行することがないよう重ねて強く求める。

以 上

2014(平成26)年7月9日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

戻る