2014.07.09

高齢者等の消費者被害の予防・救済に向けた 見守りネットワークづくりに関する会長声明

2014(平成26)年6月6日,消費者安全法の改正法案が可決成立した。地方消費者行政に求められる機能が,消費生活センターの設置による被害救済・啓発から,地域連携による被害防止・早期発見へと,新たな段階を迎える。
改正法は,国及び地方公共団体の関係機関は,病院,教育機関,消費生活協力団体又は消費生活協力員等により「消費者安全確保地域協議会」を組織し,同協議会は,消費生活上特に配慮を要する消費者の見守り等必要な取組を行うことができる旨を定め(第11条の3~第11条の6),消費者の利益の擁護又は増進を図るための活動を行う民間の団体又は個人のうちから,消費生活協力団体及び消費生活協力員を委嘱できること(第11条の7及び第11条の8)などを定めている。
高齢者等の消費者被害を防止・救済するため,地方公共団体の関係機関と地域の関係者とが連携して高齢者等を見守るネットワークを構築することは,これまでにも埼玉県内市町村において取り組まれてきた例があるが,改正消費者安全法に上記地域協議会の設置が規定され,特に配慮を要する消費者の個人情報を提供できる根拠規定が設けられたことにより,市町村の消費者行政の事業として地域のネットワークの構築が一層推進されることが期待される。
地域の見守りネットワークが機能するためには,市町村の高齢者福祉関係部署や地域の高齢者に接する地域包括支援センター,社会福祉協議会,民生委員等が参加することがもちろん不可欠であるが,現在でも多忙を極める高齢者福祉関係者に消費者トラブルの発見や防止の役割を委ねるだけでは,十分な機能を果たすことは困難である。
そのため,消費者安全確保地域協議会の構成員である「消費生活協力団体及び消費生活協力員」となる,消費者市民サポーターや消費者団体を積極的に育成し,地域連携の民間の主体として継続的な役割を果たすことが重要である。消費者問題に関心を持ち自ら考え行動する消費者市民や消費者団体の育成は,2012(平成24)年12月13日施行の消費者教育の推進に関する法律(以下,「消費者教育推進法」という。)の基本理念,及び,同法で設置が求められている「消費者教育推進地域協議会」の目的とも一致するものであり,同法律を活用した育成事業の展開が期待されるところである。
そこで,当会は埼玉県並びに市町村に対し,以下のような取り組みを求めるものである。

  1. 市町村は,消費者行政の重点的な施策として,消費者安全確保地域協議会を設置し,消費生活部門と高齢者福祉部門とが連携して,高齢者等の生活に密着して活動する民間関係者(消費生活協力団体等)の連携・協働する実効的な高齢者等の見守りネットワークづくりに取り組むこと。
  2. 市町村は,消費者教育推進法に基づく消費者教育推進地域協議会を設置し,消費者問題に関心を持ち自ら考え行動する消費者市民や消費者団体を育成し,これらの民間関係者が主体的に活動する基盤を継続的に支援すること。
  3. 埼玉県は,県内市町村における実効的な地域ネットワークづくり,消費者安全確保地域協議会の設置・運営及び消費者教育推進地域協議会の設置・運営を推進するため,県域での消費者市民サポーターや消費者団体リーダーの育成と継続的な活動支援並びに消費者行政担当職員の研修を実施すること。

以 上

2014(平成26)年7月9日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

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