2014.09.11

死刑執行に対する会長声明

本年8月29日、東京拘置所において1名、仙台拘置所において1名の死刑確定者に対し、それぞれ死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣就任以降、6度目の死刑執行であり、同大臣の命令により死刑が執行された死刑確定者は、合計11人となった。
日本弁護士連合会は、2013年2月12日、谷垣禎一法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑制度存廃についての国民的議論が尽くされるまでの間、死刑を執行しないよう強く求めていた。
また、当会も、繰り返し、政府及び国会に対し、死刑廃止に向けた全社会的議論を尽くすこと及びそのための施策策定を求めるとともに、かかる議論集約が十分にできるまで再び死刑を執行することがないよう求めてきた。
それにもかかわらず行われたこの度の死刑執行に対して、当会は、厳重に抗議する。
改めて指摘するまでもなく、1989年に「死刑の廃止を目指す市民的及び政治的権利に関する国際規約・第二選択議定書」が国連総会の場で採択されて以降、今日に至っては死刑制度の廃止こそが国際的潮流となっている。このことは、2013年12月末の時点で、死刑を法律上・事実上廃止している国が140カ国に及んでいることからも明らかである。
さらに、本年7月24日には、国際人権(自由権)規約委員会が、市民的及び政治的権利に関する国際規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対して総括所見を発表した。その中では、死刑制度について、死刑確定者もその家族も死刑執行の日以前に事前の告知を与えられていないこと、再審請求あるいは恩赦の請求に死刑執行を停止する効果がなく有効でないこと等に対して懸念が表明されている。そして、これらの懸念事項を改善することに加え、死刑の廃止を目指し、前記第二選択議定書に加入することを検討すべきであると勧告されている。
この度の死刑執行は、指摘された問題点を何ら改善しないまま、総括所見の発表からわずか1か月で行われており、国際協調主義を基調とする日本国憲法の下では、到底容認することのできない暴挙であるといわなければならない。
当会は、改めて、政府(法務省)に対し、死刑制度に関する国際的潮流や死刑執行の実態を含めた十分な情報を開示して制度存廃についての全社会的議論を尽くすことを求めるとともに、かかる議論集約が十分にできるまで再び死刑執行を行うことのないよう強く求める。

以 上

2014(平成26)年9月11日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

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