2014.10.09

東京都議会議員による女性差別発言に対する会長声明

  1. 2014(平成26)年6月18日、東京都議会本会議場において、塩村文夏議員(以下「塩村議員」とする)が、妊娠や出産に悩む女性への支援策について東京都側に質問をしていた際、議場の一角から、男性の声で、「自分が早く結婚したらいいじゃないか。」「産めないのか。」などといった野次を受けた。各方面からの批判を受け、その後同月23日になって、ようやく鈴木章浩議員が名乗り出て、塩村議員に謝罪したものの、未だに野次を飛ばした他の議員は名乗り出ず、またこれに対する調査も行われていない。
  2. 同年9月16日、塩村議員への野次問題を受けて、東京都議会の超党派議員で構成される「男女共同参画社会推進議員連盟」(以下略称「都男女共同議連」とする)が、約5年ぶりに総会を開いたが、会長に選ばれた野島善司議員(以下「野島議員」とする)が、総会終了後、前記野次問題に関して記者から受けた質問に対し、「結婚したらどうだというのは僕だって言いますよ。平場では。」などと発言し、さらに多くの批判を受けている。
    都男女共同議連の活動目的は、男女平等社会の実現を当然の前提とした上で、さらに男女各人の個性に基づいて能力を十分に発揮できる「男女共同参画社会」の実現を目指し、具体的な取組を行う点にあるとされている。これに鑑みれば、いやしくもその会長である野島議員による前記発言は、同議連の目的に明らかにもとるものである。前記一連の発言は、男女共同参画や女性の人権に関する東京都議会議員の意識の低さを示しており、今後の東京都議会のあり方が問われている。
  3. そもそも結婚するかしないかは、個人の自己決定権にかかわる重要な選択の問題であるところ、前記一連の発言は、女性は結婚すべきであり子どもを産むべきであるという固定的な性別役割を強要するものとも取れ、憲法13条が保障する個人の尊厳を蹂躙するものと言わざるを得ない。また塩村議員への野次は、同議員が女性であるがゆえになされたと考えられるところ、明らかな女性差別発言であり、両性の平等を保障する憲法14条にも反するものである。
    そして、前記一連の発言は、すべての女性に対する著しい侮辱とも言える。特に「産めないのか。」という野次は、まるで女性は子どもを産んでこそはじめて価値があるかのように受け取られかねない発言であり、何らかの事情で出産が難しい女性をさらなる深い苦しみに突き落とすもので、断じて許されるものではない。
    日本国の首都である東京都の都議会議員の発言は、言うまでもなく社会的影響力が極めて大きい。前記一連の発言は、世界中に、日本が女性差別を根強く残す国であると印象付けることともなりかねない。かかる東京都議会の位置づけや、男女共同参画基本法の趣旨に鑑みれば、国も今回のことを、一地方自治体の問題ととらえるべきでなく、国政レベルにおいても含め、決して再発なきよう認識を新たにすべきである。
  4. 当会は、東京都議会においてこのような女性差別が罷り通っている現状を深く憂慮し、今後の女性差別の防止に向けて、前記一連の発言に強く抗議するとともに、東京都議会及び国に対し、女性に対するあらゆる差別防止に向けて全力で取り組むよう要請する次第である。

以 上

2014(平成26)年10月9日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

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