2015.03.18

商品先物取引法における不招請勧誘禁止を 省令によって緩和することに抗議する会長声明

当会は,2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた,商品先物取引の不招請勧誘(顧客の要請を受けない電話・訪問勧誘)禁止規定を大幅緩和する商品先物取引法施行規則改正案(第102条の2第2号)について,同年4月15日付意見書において,断固反対であるとの意見を表明した。
ところが,本年1月23日,経済産業省及び農林水産省は,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた。本省令は,当初の公表案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有し,顧客の理解度を確認する等,適合性の要件を満たした場合を不招請勧誘禁止の例外として盛り込んだものである。
本省令によれば,年収や資産の本人申告書面を差し入れさせたり,理解度を書面等で確認する等の方法により適合性の確認がなされることになるが,適合性の確認を理由に不招請の顧客に対する電話や訪問が可能となる。そして,勧誘により商品先物取引に一定の興味を持った顧客でなければこのような確認に応じることは考えにくいのであるから,実際は確認と勧誘が一体としてなされることが想定される。本省令は,事実上,商品先物取引の勧誘を不招請で行うことを許容するものであり,不招請勧誘を解禁するに等しいものと言わざるを得ない。
また,不招請勧誘禁止の例外の要件を確認する方法として,年収や資産の本人申告書面を差し入れさせたり,理解度を書面等で確認する等の方法は,従来から多くの商品先物取引業者が同様に行ってきており,その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正解を教授するなどの行為が蔓延し,被害が生じてきた経緯がある。このような実態からすると,これらの手法が委託者保護のために機能するとは考えられない。
このように,本省令は,事実上不招請勧誘を解禁するに等しく,適合性の確認も機能するとは考えられないものであり,委託者保護の徹底のために不招請勧誘禁止を規定した法律の委任の範囲を超える違法なものと言わざるを得ない。
長年,商品先物取引による深刻な被害が生じ,度重なる行為規制の強化にもかかわらず被害が減らないため,2009年(平成21年)7月,商品先物取引法改正の際,与野党一致の下で不招請勧誘の禁止が導入された。しかし,上記改正法施行後も,商品先物取引業者が顧客に対し,金の現物取引やスマートCX(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや,すぐさま通常の先物取引を勧誘し,多額の損害を与える被害が少なからず発生しており,不招請勧誘禁止の導入に至った実態に変わりはない。
本省令が施行されるときは,商品先物取引における被害が再び増大することが強く懸念される。本省令は,不招請勧誘禁止規定が導入された立法の経緯及び被害実態を軽視し,法が禁止する不招請勧誘を事実上解禁するに等しいものであり,委託者保護及び取引の公正の観点から到底容認できず,当会はこれに強く抗議する。

以 上

2015(平成27)年3月12日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

戻る