2015.03.19

川崎市で発生した事件に関する実名報道に抗議する会長談話

「週刊新潮」3月12日号は,本年2月に神奈川県川崎市で中学1年生の男子が殺害された事件について,被疑者として逮捕された少年のうち1名の実名及び顔写真を掲載した。
このような報道は,罪を犯したとされる少年について,氏名,年齢,職業,住所,容ぼう等によりその者が事件の当事者であると推知することができるような記事や写真を出版物に掲載すること(「本人推知報道」)を禁止した少年法61条に反するものである。
子どもの権利条約第40条第2項は,犯罪を行ったとされるすべての子どもに対する手続のすべての段階における子どものプライバシーの尊重を保障している。そして少年司法運営に関する国連最低基準規則第8条は,少年のプライバシーの権利があらゆる段階で尊重されなければならず,原則として少年の特定に結びつきうるいかなる情報も公開してはならないとする。
少年事件について罪を犯したとされる少年本人を推知できる報道がされることは,少年のプライバシー権や成長発達する権利を侵害し,少年の更生と社会復帰を阻害するものである。そのため,少年法61条は,少年事件の本人推知報道を事件の区別なく一律に禁止しているのであり,重大事件であればあるほど,その要請はより強くなる。
これに反して実名や写真を報道することは,少年の人格を否定して一方的に社会的責任を負わせることになりかねず,少年の社会復帰と更生の可能性を決定的に阻害する行為である。そのような実名報道には,なんらの合理性も正当性も認められず,許されるものではない。
それにもかかわらず,今回,少年事件の実名報道が行われたことは極めて遺憾であり,当会は,今回の本人推知報道が明らかに少年法に違反し,犯罪報道として公正さを欠いていることについて厳重に抗議するとともに,今後,同様の実名や写真掲載等の本人推知報道がなされることがないよう,強く要請する。

以 上

2015(平成27)年3月16日
埼玉弁護士会会長  大倉 浩

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