2016.08.29

改めて消費者庁等の移転に反対する会長談話

消費者庁及び国民生活センター(以下、「消費者庁等」という。)は、本年7月、複数の業務について徳島県への移転に向けた試行を行った。ただし、消費者庁の中心的機能である政府全体の消費者行政の司令塔機能、消費者保護関連法制度の企画立案機能、所掌分野に関する国会対応、特定商取引法や景品表示法等の法執行機能等については、試行の対象としなかった。
この試行結果を踏まえ、消費者庁は、本年8月、国会、官邸、関係省庁、地方自治体、民間団体等を結ぶテレビ会議等の共通のシステムが構築されていない現状においては、これらの業務の執行を地方で行うには課題があるとしていったん見送りとし、徳島県に「消費者行政新未来創造オフィス」を設置して、3年後を目途に、同オフィスの成果や課題の改善状況を踏まえて検証・見直しを行う、との方針を表明した。国民生活センターの研修業務の試行についても、これを徳島県で行うことは全国からのアクセスに支障があることから現状では見送りとし、同オフィスにおいて地域の特性を踏まえた研修を実施する、との方針を示した。
今回の試行結果に照らし、消費者庁等の本来的業務の地方移転を見送ったことは、当然の判断であると言える。なお、消費者庁等の移転自体の判断は、単に関係先にテレビ会議等のシステムが導入されるか否かという外形的な条件整備だけで決まるものではないし、こうした環境整備は消費者庁や徳島オフィスが取り組む課題ではない。むしろ、関係省庁、国会、関係団体等の利害を調整し消費者行政を推進する消費者庁の本来的機能を確保できるかという観点から慎重に判断すべき問題であり、今回の試行によって実質的に結論が示されたといってよい。消費者庁等の移転については断念すべきであり、本年8月末に予定されている政府の「まち・ひと・しごと創生本部」の取りまとめでは、「3年後を目途に見直し」ではなく「移転しない」という結論を明記すべきである。
また、「消費者行政新未来創造オフィス」が具体的にどのような業務に取り組むのか、現在のところ明らかではないが、既存業務の地方移転に関する試行を漫然と実施する場ではなく、消費者庁等の現在の体制と機能を維持したうえで、あくまでも消費者行政の機能を拡充強化する観点で、これまで取り組んで来なかった新たな業務を実践する場として政策課題を明確に設定すべきである。そして、同オフィスについての3年後の検証・見直しは、同オフィスが掲げた政策課題の進捗状況及び成果を、消費者行政全体の充実という観点から客観的に行うべきである。

以上

2016(平成28)年8月29日
埼玉弁護士会会長  福地 輝久

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