2015.12.15

特定商取引に関する法律を改正し,日本版Do Not Call制度の導入を求める意見書

2015年(平成27年)12月15日
埼玉弁護士会会長 石河 秀夫

第1 意見の趣旨

  1. 特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)第2条第3項に規定されている電話勧誘行為について,特商法の規定を改定し,予め電話勧誘行為を拒否した消費者の電話番号への電話勧誘行為を包括的に規制する条項を新たに追加すべきである。
  2. 特商法を改正し,追加すべき条項の内容は以下の通り規定すべきである。
    1. 消費者庁において,消費者が予め電話勧誘行為を拒否する意思を示すものとして,消費者の申出に基づき当該消費者の電話番号を登録する電話勧誘拒否リストを作成すること。
    2. 電話勧誘行為をする者に,架電する電話番号が電話勧誘拒否リストに登録されていないかどうかの確認義務を課し,同リストに登録されている消費者への架電を禁止すること。
    3. 電話勧誘拒否リストに登録されている電話番号へ電話勧誘を行うなどの違反行為を行った場合には,業務改善命令等の対象となり,業務改善命令等が発せられた後,当該業務改善命令等に従わない場合には,罰金等の刑事罰が科されるようにすること。
    4. 電話勧誘拒否リストに登録した電話番号への電話勧誘行為に基づく消費者契約については,消費者に無条件の取消権を認めること。

第2 意見の理由

  1. 本意見書の目的
    電話勧誘行為による電話勧誘販売は不招請勧誘行為であるところ,不意打ち性が高い勧誘行為であり,消費者が望まない契約を締結させられる恐れが極めて高い問題のある勧誘行為である。
    そのため,現在特商法により電話勧誘行為によってなされる電話勧誘販売については規制がなされているが,クーリングオフなどの事後的な救済に留まるものが多く,電話勧誘販売による被害は現状でも跡を絶たない状況である。
    当会は,既に2015年5月14日付け「特定商取引法の改正に関する意見書」において,訪問販売については,お断りステッカー制度等によるDo Not Knock制度,電話勧誘販売についてはDo Not Call制度の導入を提案する意見を公表したところであるが,Do Not Call制度の導入に関する最近の議論を踏まえて,論点に対する見解を整理するとともに,Do Not Call制度の具体的な制度イメージを提言するものである。
    なお,ここで論じる内容は,Do Not Knock制度に関する導入の論拠に関する議論にも共通するほか,登録方式のDo Not Knock制度の場合は具体的な制度イメージも共通するものといえる。
  2. 電話勧誘行為による電話勧誘販売の問題点
    1. 消費者が望まない契約を締結させられる恐れが強い
      電話勧誘行為による電話勧誘販売には不意打ち性,密室性,即断の慫慂・強要,勧誘の執拗性・拒絶の困難性などの多くの問題点が存在し,消費者が望まない契約を締結させられる危険性が非常に高い勧誘方法である。
      実際に,リフォーム工事被害,学習教材被害,また近年問題となっているいわゆる特殊詐欺などの多くの消費者被害は電話勧誘行為や訪問販売などの不招請勧誘によって発生している。
      上記の点は下記に述べるデータからも明らかである。
      まず,独立行政法人国民生活センター(以下「国民生活センター」という。)が編纂している「消費生活年報2014」によれば,2010年度から2013年度にかけての電話勧誘販売に関する相談件数は,それぞれ,6万4183件,6万9826件,7万9990件,10万1945件となっている(消費生活年報2014 19頁)。このように電話勧誘販売について相談件数は年々増加の一途をたどっている。
      また,電話勧誘販売の苦情や相談の増加は,高齢者において特に顕著となっている。この点について,「平成26年版消費者白書」によれば,2013年度の高齢者の消費生活相談件数は,2008年度を基準に見ると5年間で62.8%増となっており,前年度からも大幅に増加している。そしてこの要因については,電話勧誘販売に関する相談の増加であるとさており,実際に2013年度の高齢者の相談の中で電話勧誘販売に関する相談が全体の23.9%に達している。加えて,「消費生活年報2014」によれば,2013年度の電話勧誘販売について相談をした年代構成比における60歳代と70歳代以上の比率は,全体の70.8%と極めて高率になっている。
      こと高齢者の電話勧誘販売の被害は,以前被害に遭ったサービスについて「解約してあげる」「損をとりもどしてあげる」などと説明して,これまであった被害の救済を装って被害に遭った人を勧誘し,金銭を支払わせるという,いわゆる二次被害で目立つようになっている(平成26年版消費者白書 138頁)。
      以上述べたように,電話勧誘行為による電話勧誘販売については多くの被害相談が寄せられ,現に生じている消費者被害の温床となっている。特に,上記のデータ上からも明らかなように,常時住所にいることが多く,判断能力に衰えが生じている可能性が高い高齢者が電話勧誘販売により望まない契約を締結させられる等のケースが極めて多くなっている。
      また,国民生活センターによれば,現在においてもiPS・STAP 細胞の関連事業や東京オリンピックをかたった詐欺的トラブルが電話勧誘行為によってもたらされているとのことである。
      以上のように,電話勧誘行為による電話勧誘販売という販売方法は新たな悪質商法のツールとなり易いものであり,電話勧誘行為の不意打ち性,密室性,即断の慫慂・強要,勧誘の執拗性・拒絶の困難性などの性質と相まって,新たな悪質商法の被害拡大の要因となっている。
    2. 電話勧誘行為が消費者の平穏な生活を侵害するものであること
      電話勧誘行為は,時間や状況を選ばずに無制限に消費者個人の生活圏に入り込むものであり,自宅や勤務先に対して行われた場合,消費者の平穏な生活を侵害するものである。また,その匿名性ゆえに,消費者が素性のわからないものとの会話を余儀なくされるという特徴がある。
      この点については,第26回近畿弁護士会連合会大会シンポジウム報告書47頁の訪問勧誘,電話勧誘に対する意識のアンケートにおいて,電話勧誘は勧誘を断っても話をやめない,電話の相手をして時間をとられること自体が迷惑などの理由でほぼ全員が迷惑であると回答しており,電話勧誘行為が個人の平穏な生活を侵害するものであることを如実に示している。
      さらに,埼玉弁護士会にて,埼玉県内に存する自治会,老人クラブに関する各市町村単位の連合会,並びに,老人クラブの会長を対象とした研修会参加者に対して,2015年7月から9月にかけて訪問販売・電話勧誘に関する意識調査を実施したところ,「地域にお住まいの方にとって,要請をしていないにもかかわらず,事業者から電話をかけてきて,販売・勧誘をされることは,迷惑だと感じていると思う。」という問いに対して,約84%が「そう思う。」との回答をするとともに,「電話勧誘販売に対して,事前に電話番号を登録しておけば,その電話番号には,事業者から電話をかけて勧誘することができないようになれば,高齢者などの弱者の方の消費者被害の防止につながると思う。」という問いに対しても,約69%が「そう思う。」との回答をしている。
    3. 結論
      以上から,電話勧誘行為による電話勧誘販売は主として高齢者の消費者被害の温床であり,定型的に消費者の私生活や業務の平穏を侵害する勧誘方法である。
      そのため,電話勧誘行為は適切に規制されるべきである。
  3. 事業者側の意見に対する反論
    平成27年8月に発表された内閣府消費者委員会特定商取引専門調査会の中間発表では,以下に述べるような事業者側の意見が載せられていたが,いずれも下記のとおり理由はないものと考えられる。
    1. 規制の効果に関する検証が十分に行われていないとの意見への反論
      事業者側は立法事実がそもそも存在しないことの根拠として,現行法の規制の効果の検証が十分に行われていないことを根拠として述べている。
      しかし,「消費生活年報2014」の発表からも明らかなように,高齢者が電話勧誘販売を端緒として,消費者被害に遭ってしまう事例は増加の一途を辿っている。この事実は端的に現行法の規制では電話勧誘販売による消費者被害を防げないことを表している。
      また,現行法が事後的な規制を主としており,事後的な規制ではいったん事業者側に金銭の支払いを行っている以上,事業者側から支払った金銭を取り戻さなければならないため,消費者側が①事業者側の無資力のリスクを負う,②裁判手続きを経ることにより,時間的なコストや裁判等のコストを支払うことになる,などの様々なリスクを負うことになってしまい,消費者側の実質的な被害救済がほぼ不可能な状況となっている。
      したがって,事業者側の意見には根拠がなく,これまで述べてきたように立法事実が存在することは明らかである。
    2. 消費者の意思表示については接触後の拒否と接触前の拒否とでは営業行為に対する影響が本質的に異なり,事前規制はオプトアウト規制であっても,営業行為の否定になるとの意見に対する反論
      事業者側は,オプトアウト規制は,営業努力の機会を奪うものであり,オプトアウト規制であっても,営業行為に対する過度の制約になると主張する。
      この点,事業者側が根拠として挙げる営業努力は,健全な営業努力であることを前提にしていると思われる。しかし,国民生活センターや消費者庁の発表から明らかなように,現状の電話勧誘販売は高齢者の判断能力不足に乗じる,不意打ちや長時間の勧誘により消費者の意思決定を歪めるなどの違法もしくは不当な勧誘などが極めて多く行われている。
      また,電話勧誘販売は営業行為の一形態にすぎないものである。
      そのため,営業行為に対する過度の制約になるとの事業者側の意見についても何ら根拠のない意見である。
    3. 一部の悪質な事業者によって引き起こされており,これらの悪質な事業者に対する現行法を遵守させる執行体制の構築,司法救済の充実をもって実現すべきであるとの意見対する反論
      事業者側は一部の悪質な事業者に対する対応を充実させるべきであると主張する。
      悪質な事業者に対する対応策を充実させなければならないのは,事業者側の主張のとおりであるが,一方で悪質な事業者に対する対応策の充実が直ちに先に述べた電話勧誘販売の問題点の解消には当然にはつながらない。
      これまでに述べてきたように電話勧誘販売はその不意打ち性などにより,消費者が望まない契約を締結してしまうところに問題の本質がある。この電話勧誘販売の問題点は,悪質な事業者に限られるものではないことは当然であり,それゆえこの電話勧誘販売の問題点に対処するためには悪質な事業者に対する対応のみならず,すべての電話勧誘販売に対し事前規制を行わなければならない。
    4. 小括
      以上述べてきた通り,事業者側の反対意見はいずれも理由のないものである。
  4. 営業の自由との関係
    1. 営業の自由の侵害にならないか
      この点,電話勧誘行為は事業者にとっては事業者の都合に合わせて勧誘をすることができ,また勧誘先の相手方の場所も選ばないことから,費用対効果の優れた勧誘方法である。
      そのため,電話勧誘行為を禁止することは事業者の営業の自由を侵害しないかが問題となる。
    2. 電話勧誘行為は迷惑行為の側面を有しており,営業の自由による保障の程度は低く,規制を受けやすい性質のものであること
      先に述べたように,電話勧誘行為は不意打ち性,密室性,即断の慫慂・強要,勧誘の執拗性・拒絶の困難性などの性質を有している。それゆえ,多くの消費者被害が電話勧誘行為による電話勧誘販売によりもたらされている。
      また,消費者の認識としても,私生活や業務の安全を突如として乱すものであり,迷惑行為であるとの認識が浸透している。実際に平成27年5月13日の消費者庁の発表によれば,電話での勧誘を受けたくない消費者が96.4%にも上っている。加えて,本意見書の第2の2⑵でも述べたように,他のアンケートにおいても電話勧誘行為が迷惑行為であるとの認識が消費者に浸透していることが裏付けられている。
      さらに電話勧誘は事業者にとって,費用対効果の優れた勧誘方法であったとしても,数ある勧誘方法の一つに過ぎないものである。
      以上の電話勧誘行為に内在する性質からすれば,電話勧誘行為は迷惑行為であるとの側面が強く,また営業の自由の一形態に過ぎないものであることからすれば,営業の自由による保障の程度,すなわち要保護性は極めて低いと言わざるを得ない。
      また,最高裁昭和50年4月30日判決(いわゆる薬事法違憲判決。以下「薬事法違憲判決」という。)の趣旨に徴すれば,営業の自由は社会的相互関連性が大きいものであって,いわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制を受ける許容性が広いとされている。
      そして,電話勧誘行為は迷惑行為の側面を有しており,本意見書第2の2(2)で述べたように,消費者の平穏な生活という精神的自由により保護をうける重要な法益を侵害する行為であることからすれば,その性質からして,公権力による規制が必要となる場面が多いと言わざるを得ない。
    3. 本意見書における規制は営業の自由の直接的な規制ではないこと
      本意見書が求める規制は,電話勧誘行為について事前規制を行うものである。
      先に述べたように,電話勧誘行為は数ある勧誘方法の一つに過ぎないものであり,営業の自由における方法の規制に過ぎない。そのため,本意見書が求める規制は,営業の自由そのものを規制する目的のものではない。
      また,規制の対応も,事前規制を原則禁止する,いわゆるオプトイン規制ではなく,原則は電話勧誘行為を行ってよいが,例外的に電話勧誘行為を拒否する消費者に対する電話勧誘行為を禁止するという,いわゆるオプトアウト規制であり,オプトイン規制に比べて,緩やかな規制となっている。
      以上のことからすれば,営業の自由の侵害に当たるか否かの判断基準は薬事法違憲判決の趣旨に徴して,おのずから緩やかなものになることは明らかであろう。
    4. 規制目的が重要な公共の利益であること
      すでに述べたように,電話勧誘行為について事前規制を行う目的は消費者被害の防止にある。電話勧誘行為による電話勧誘販売が多くの消費者被害を生み出していることは,もはや否定のしようがない事実であり,多くの消費者が望まない契約を締結させられている現状を防止することが極めて重要な公共の利益であることは疑いがないところである。
    5. 結論
      以上の通り,①電話勧誘行為の営業の自由の保障の程度は極めて低いこと,②本意見書が求める規制の対応は緩やかなものであり,また営業の自由そのものを規制する対応のものではないこと,③本意見書が求める規制の目的が極めて重要な公共の利益に資するものであること,からすれば,営業の自由に反しないか否かの判断基準は規制が合理的であるかどうかという観点から判断されるべきである。
      したがって,本意見書が求める規制は,必要最小限度の規制として,何ら営業の自由を侵害しないものであるから,早急に特商法を改正し,電話勧誘行為について本意見書が求める規制を導入することを求めるものである。
  5. 本意見書が求める規制の内容
    1. 基本的な考え方
      以上を踏まえると,電話勧誘行為の規制立法の枠組みとしては,電話勧誘拒否登録(Do Not Call Registry)を基本として,民事効を織り込んだ規制が望ましい。すなわち,特商法第2条第3項に規定されている電話勧誘行為について,特商法の規定を改定し,予め電話勧誘行為を拒否した消費者の電話番号に電話勧誘行為を行うことを包括的に規制する条項を新たに追加すべきである
    2. 電話勧誘拒否登録リスト
      まず,消費者が電話勧誘行為を予め拒否する方法については,電話勧誘行為を望まない消費者が所管官庁に対して氏名と電話番号を届け出ることによって,電話勧誘拒否リストに当該電話番号が登録されるようにすべきである。
      同リストは,所轄官庁が統一的に管理するものとすべきである。登録の要件については,同リストに電話番号が登録されることによる実害がほとんど想定されないことからすれば,特段定めないものとし,希望する者すべてが登録を行えるようにすべきである。
      なお,希望者すべてが同リストに登録可能であるとした場合,消費者以外の個人事業者,中小零細事業者なども登録が可能となるが,個人事業者や中小例事業者と消費者との明確な線引きは不可能であり,事業者であっても消費者と同様の被害を受けることもあり得ることから殊更に除外すべきではないと思われる
      また一度登録をすれば,本人からの登録解除の申出,本人の死亡等の事情がない限り,原則として,無期限で登録されるべきである。
      他方,登録解除については,本人の意思確認等を徹底する制度を構築し,不正な登録解除に対しては罰則を設けるべきである。
      なお,同リストは,公開されてしまった場合,消費者の氏名と電話番号が特定されてしまい,悪質な事業者が悪用するおそれ(いわゆるカモリスト化)もあることから,その提供にあたっては,韓国における類似制度を参考にすべきである。すなわち,同リストの開示は行わないものとし,事業者が同リストに登録があるかどうかの確認を行うに際しては,事業者が電話勧誘行為を行おうとする対象の電話番号(以下「対象電話番号」という。)をリスト化し,そのリストを所轄官庁に電子メール等の方法により送付を行った上で,所轄官庁が同リストに登録されている電話番号を事業者から送付されたリストより削除した後に,事業者に返送するという制度設計を行うべきである。
      第三者への提供等の目的外使用については,刑事罰をもって禁止すべきである。
    3. 電話勧誘拒否リストへの登録の有無の確認と同リストへ登録した消費者への電話勧誘行為の禁止
      事業者には,最低でも週1回は,対象電話番号が電話勧誘拒否リストに登録されていないかの確認義務を課すべきである。
      また,同リストに登録された消費者への電話勧誘行為は禁止すべきである。
    4. 行政規制・刑事罰
      特定メール適正化法にならって,禁止規定を遵守していないと認められる事業者に対する措置命令等の行政処分や報告及び立入検査,行政処分の公表等の権限を所轄官庁に与えると共に,当該行政処分等に違反した者に対する刑事罰を定めることにより,実効性を確保すべきである。
      また,制度の実効性確保のために,独占禁止法と同様に課徴金制度を導入すべきである。
    5. 民事効
      被害者の事後的救済を可能とするために,消費者契約法の困惑類型にならって,電話勧誘拒否リストへ登録された電話番号に対する電話勧誘行為によってなされた契約について,消費者に取消権を付与すべきである。消費者契約法第4条第3項は,退去妨害など消費者の私生活の平穏を害し,消費者を困惑させる態様で勧誘がなされた場合には,消費者の意思決定に瑕疵をもたらすことを考慮した規定である。同様に,消費者が電話勧誘拒否の意思表示をしているにもかかわらず,事業者があえて電話勧誘行為を行った場合は,消費者の私生活の平穏を害し,消費者を困惑させる態様での勧誘というべきであるから,退去妨害と同様に,消費者の意思決定に瑕疵がもたらされる可能性があるため,消費者に取消権を付与すべきである。
    6. 適用除外
      まず本意見書が求める規制が新たに導入されるものであることから,特商法の現行の電話勧誘販売に関する規制を変更するものではない。電話勧誘拒否リストに登録をしなかったからと言って,悪質な電話勧誘販売の被害に甘んじなければならないという理屈は到底成り立たないものであり,登録をしなかった者に対する保護は現行の規定によって行われるべきである。
      他方で,本意見書が求める規制と適用除外を定めた特商法第26条の規定は抵触するものが多いことから,特商法第26条の規定はあくまで,現行法の規定に対する適用除外にとどめ,本意見書が求める規制の適用除外は別途規定されるべきである。
      本意見書が求める規制の適用除外については,特商法第26条の趣旨に鑑み,いわゆる「御用聞き」など電話を受けた者があらかじめ電話勧誘行為を受けることについて同意する旨を通知している場合,公共団体による電話勧誘行為,組織的内部行為,株式会社以外の者が発行する新聞の勧誘行為など,営業活動などとは言えない行為は適用除外とすべきである。
      また,特商法第26条第1項第1号に定める「申込者の営業のため」に締結された場合については,本意見書に定める規制の適用除外にすべきではない。
      先に述べた通り,電話勧誘拒否リストに登録する者について事業者も含まれるのであり,同リストに電話番号を登録した以上,当該事業者が電話勧誘販売によるメリットとデメリットを比較したうえで拒否の意思を明示したことになる。そのため,「申込者の営業のため」に電話勧誘販売によって契約を締結することはおよそ考えられず,仮に契約したとすれば,電話勧誘販売によって望まない契約をさせられたと推認せざるを得ない。
      したがって,「申込者の営業のため」に締結された場合を適用除外とした場合,同リストへの登録が形骸化する,すなわち本意見書が求める規制が形骸化することになるのであるから,「申込者の営業のため」に締結された場合であっても,同リストに登録された電話勧誘行為によって締結された契約である以上,取消の対象とすべきである。

以上

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