2015.07.14

死刑執行に対する会長声明

  1. 2015年6月25日、名古屋拘置所において、1名の者に対して死刑が執行された。
    第二次安倍政権以降では、7度目、合計12名の死刑が執行されたこととなった。
    当会は、この死刑執行に対し、強く抗議するものである。
  2. これまでにも、死刑事件につき再審で無罪となった判決が4件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)存在し、2014年3月27日には、死刑事件である袴田巖氏の再審を開始する決定が出されるなど、死刑事件においてもえん罪や誤判が存在することは既に明白である。
    そして、えん罪や誤判により、国家に生命を奪われるということは、取り返しのつかない社会的不正義であり、人権侵害の最たるものであって、万に一つもあってはならない。
  3. また、2014年12月末日時点での法律上・事実上の死刑廃止国は140か国(死刑存置国58か国)であり、日本は、国連から、死刑廃止を検討するようにとの勧告を度重なり受けているところである(1998年国際人権規約委員会「死刑廃止に向けた措置を講ずること」、2007年国連拷問禁止委員会「深刻な懸念」、2008年国際人権規約委員会「世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべき」、2013年国連拷問禁止委員会、2014年「死刑の廃止に十分に考慮すること」)。
  4. 日本弁護士連合会は、2014年11月11日、上川陽子法務大臣に対して「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑冤罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出した。
    そして、同要請書の中では、有識者会議の設置や死刑に関連する情報の公開などを具体的に求め、国民的議論をするように要請し、それが尽くされるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを求めている。
    さらに、死刑えん罪事件を未然に防ぐため、捜査機関が収集した証拠リストの弁護人への交付を含む全面的証拠開示制度の整備、科学的に信頼性の高い方法による再鑑定を受ける権利の確立の要請をしてきたところである。
  5. 政府は、えん罪を可能な限り防ぐ手立てを何らとることもなく、死刑廃止につき前向きな検討をすることもなく、今回の死刑を執行した。
    当会は、人権擁護の面からも、社会的正義の面からも、そして国際潮流の面からも、一切の要請を無視して死刑を執行した政府に対して、強く抗議するとともに、全社会的議論が集約するまでは死刑の執行をしないことを強く求める。

以上

2015(平成27)年7月14日
埼玉弁護士会会長  石河 秀夫

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