2015.06.16

少年法の適用年齢に引き下げに反対する会長声明

与党自由民主党は,「成年年齢に関する特命委員会」を設置し,少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げる少年法改正を検討していると報じられている。
これは,選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が今国会(第189回通常国会)に提出され,同法案の附則で「少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることに関連している。 しかし,法律の適用年齢を考えるに当たっては,それぞれの法律の趣旨に照らして,各法律ごとに個別具体的に慎重に検討すべきである。このことは,少年法の適用年齢を引き下げるか否かについても同様であり,少年法の趣旨に照らして,慎重な検討がなされなければならない。
旧少年法は,適用年齢を18歳未満としていた。しかし,1948年に制定された現行少年法は,適用年齢を20歳未満に引き上げている。これは,18歳,19歳の年長少年も心身の発達が十分でなく環境その他外部的条件の影響を受けやすいことから,「刑罰」を科すよりも保護処分によってその「教化」を図る方が,適切であるとの考えによるものである。
少年法に基づく保護処分では,心理学や教育学等の人間関係諸科学に基づいて,犯罪の背景,要因となった少年の資質や環境上の問題点の調査・分析が行われたうえで,個別的な指導・教育が行われている。それにより,少年の成長を支援することが可能であり,刑罰よりも保護処分の方が少年の再犯防止に有効である。少年法の適用年齢を引き下げることは,18歳,19歳の年長少年から保護処分による更生と社会復帰の機会を奪ってしまうことになる。
犯罪白書によれば,少年による刑法犯の検挙人員は,2004年から毎年減少し続けており,2013年は9万413人(前年比10.6%減)となり,1946年以降初めて10万人を下回った。人口比についても2004年から毎年低下し,2013年は,763.8(前年比84.5pt低下)となり,最も人口比の高かった1981年(1,721.7)の半分以下になっている。
このように,少年犯罪の件数は,減少し続け,凶悪犯罪も横ばいまたは減少傾向にある。少年犯罪が特別に凶悪化している,あるいは件数が増加している状況にあるというようなことを示す統計データは存在せず,少年法の適用年齢を引き下げるべき立法事実は存在しない。
以上から,当会は,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに強く反対する。

以上

2015(平成27)年6月16日
埼玉弁護士会会長  石河 秀夫

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