2013.09.19

竜巻被害に関する被災者生活再建支援法施行令の改正を求める声明

本年9月2日、埼玉県及び千葉県において竜巻による大規模な突風災害が発生した。内閣府の発表によれば、けが人は重傷者を含め60人以上、家屋損壊は越谷市では896棟が損壊し、うち13棟が全壊、松伏町では106棟の損壊が確認された。千葉県野田市では214棟の損壊が判明しており、両県の家屋被害は1216棟に上った(本年9月7日現在)。
被災者の方々には、被災者生活再建支援法(以下「同法」という)による支援が期待されるところ、埼玉県越谷市では既に適用が決定された。ところが、埼玉県松伏町、千葉県野田市では竜巻による大規模かつ深刻な住宅被害が発生したにもかかわらず、同法の適用要件を満たさないとして支援金が支給されない事態が発生している。
これは、同法の支援対象を定めた被災者生活再建支援法施行令(以下「施行令」という)が、自治体単位で適用対象を規定しているところに原因がある。すなわち、同法の適用対象となる自然災害について、施行令第1条第2号は「自然災害により十以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生した市町村の区域」における自然災害と定めており、越谷市はこれに該当する。これに対し、松伏町は、同じ埼玉県内の越谷市が適用市町村となったことにより、同施行令の適用基準のうち「自然災害により五以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生した」(施行令第1条4号)という基準が適用されるものの、建物被害は100棟以上におよび農作物の被害も甚大であったにもかかわらず、住宅が全壊する被害の認定を受けたものが1棟にとどまっているため、緩和された条件も満たせず同法の適用対象外となった。
同じ自然災害によって生じた被害であるのに、居住する行政区分によって適用の有無が異なるという結果は、一人ひとりの被災者の立場からすれば不条理といわざるを得ず、同法の被災者支援の目的にも合致しない。むしろ、本件災害の状況に照らすと、現実の被害実態に的確に対応せず、行政区分の違いによる支援の格差を生み、不公平な結果を惹起することとなる。
この点、政府は、平成24年5月6日に茨城県及び栃木県で発生した竜巻災害を受けて、同年24年8月15日に開催された第5回竜巻等突風対策局長級会議において、被災者の公正性が確保されるよう同法の在り方を早急に検討する旨表明していた。しかし、同法の適用基準の見直しは行われないまま本件災害が発生し、またしても支援対象となる自治体と対象とならない自治体との間の不均衡が生じる結果となった。
自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者の生活再建を支援するという同法1条に定める目的を適切に実現するため、国は、施行令を速やかに改正し、本件災害についても、現行制度では救済を受けられない被災者に対し、適切な支援を行うことを求める。

以上

2013年(平成25年)9月19日
埼玉弁護士会会長  池本 誠司

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