2021.03.10

日本オリンピック委員会(JOC)評議員会における女性蔑視発言に抗議し、国に対し男女共同参画政策の一層の推進を求める会長声明

  1. 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という)森喜朗前会長(以下「森前会長」という)は、2月3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会において、JOCが全理事のうち女性の割合を40%以上にすることを目標としていることについて、「女性理事を選ぶってのは、文科省がうるさく言うんです。女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」、「女性っていうのは競争意識が強い、誰か1人が手をあげていうと、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」、「(女性を)増やしていく場合、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないので困ると言っておられた」、「私どもの組織委員会にも女性は何人いたっけ?(中略)7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて」などと発言しました。
    森前会長の上記各発言は、会議を長時間化させる原因を女性という性別そのものに根拠があるとした上で、女性の理事の割合を増やす場合には発言の時間に制限をかけることによって、女性が意見を表明することを抑圧し、「わきまえる」ことを求めるものです。この森前会長の発言は、女性蔑視、女性差別発言であり、今なお日本社会に厳然と存在する性別に基づく偏見、差別、不平等な取り扱いを固定化し増長するものであり、看過できません。
  2. 日本では、憲法14条1項により性別による差別が禁じられ、男女共同参画社会基本法や女性活躍推進法等により、あらゆる分野での男女共同参画が求められています。
    また日本政府は、2003年、男女共同参画社会の実現に向け、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度となるよう期待するという目標を閣議決定したにもかかわらず、目標設定から18年が経過した現在も上記数値目標は達成できておらず、世界経済フォーラム(WEF)の2020年男女平等指数で、日本は153カ国中121位という惨憺たる現状に留まっています。
    森前会長の上記発言は、国のジェンダー平等の実現に向けた取り組みの方向性と完全に逆行し、何らの根拠もなく女性を差別、蔑視して女性の社会進出を阻むものであり、到底許されるものではありません。
    日本においては、こうした公人による女性差別発言があっても、大きな問題とされることがなかったため、幾度となく繰り返される結果となり、それが日本における女性差別の解消を遅らせ、日本のジェンダーギャップ指数を後退させ続けている一つの要因になっていると考えます。今回、問題を引き起こした森前会長が役職を辞しておりますが、このことで、問題がうやむやに解消されてしまうことがあってはなりません。
  3. よって、当会は、森前会長の上記発言について抗議するとともに、国に対し、上記森前会長の発言の根底にある性差別の解消に向けた一層の取組みと女性がその個性と能力を十分発揮できるよう男女共同参画政策の一層の推進を訴えます。

以上

2021(令和3)年3月10日
埼玉弁護士会 会長 野崎 正

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