2021.05.06

憲法記念日にあたっての会長談話

 本日、日本国憲法が施行されてから74年目の憲法記念日を迎えました。
 日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重及び恒久平和主義がその基本原理であり、われわれ国民はこれらの基本原理にそって国政が運営されることを希求し、それぞれ不断の努力をしてまいりました。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響は世界各地に拡散し、甚大な被害を生じさせています。日本においても、昨年から感染が各地に広がり、全国民が自身への感染を心配し、生活不安、事業の継続に対する不安が広がっています。
 政府は、現在、4都府県を対象に3回目の緊急事態宣言を発令し、酒類等を提供する飲食店に休業要請等をしています。埼玉県を含む7県をまん延防止等重点措置の実施区域に指定し、埼玉県では、さいたま市など15市町を対象区域とし、飲食店に営業時間の短縮を要請するなどしています。
 もちろん当会としても、新型コロナウイルス感染症の感染防止措置を講ずる必要性があることは異論ありません。
 しかしながら、感染拡大防止の観点を重視するあまり、必要最小限度を超えた人権制約、私権制限がなされてはなりません。
 社会全体に感染症に対する不安が醸成され、感染者やその家族等に対して感染したこと自体を非難するかのような不当な差別や偏見を助長するようなことや、特定の事業活動に対する風評被害や偏見を助長するようなことがあってはなりません。
 また、休業や短縮した時間での営業を要請するのであれば、それと一体の補償や本格的財政支援を、迅速に、そして継続的に行わなければなりません。

 このような新型コロナウイルス感染症の対応にも課題が山積する中でも、政権与党である自民党は、本年3月21日に開催した党大会において、新型コロナウイルス感染症対策を前面に出しつつも「国民の幅広い理解を得て憲法改正を」と掲げた令和3年党運動方針を示しました。そして、自民党は、このゴールデンウィーク明けに、衆議院憲法審査会を開催し、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案の採決を提案しています。
 「森友学園」や「桜を見る会」などの追及の中で行政文書の違法な廃棄だけでなく、公文書が改ざんされたことまで明らかになり、最近でも、新型コロナウイルス感染症対策の専門家会議の議事録が作成されていないことが問題となっています。国民に対し必要かつ十分な国政情報が提供されず、十分な議論が尽くされないままに、自民党が2018年に示したいわゆる自衛隊明記、内閣総理大臣に過度の権限を与える緊急事態条項創設を含む改憲が進められる危険性さえあります。

 当会では、2008年5月24日に「日本国憲法の平和主義を堅持することを求める決議」を採択し、2015年5月28日にも「集団的自衛権行使を容認する違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議」、2018年10月2日に「自衛隊を憲法に明記する憲法改正に反対する総会決議」を採択し、日本国憲法の平和主義や立憲主義を堅持するための諸活動に取り組んでまいりました。

 本日の憲法記念日に際し、まずは一日も早く新型コロナウイルス感染症の拡大が終息し、平穏な日常生活を取り戻すことを望みます。
 そして、憲法9条改正の動きについて、これまでの当会の決議などに照らし、恒久平和主義との関係で重大な疑問があることを指摘し、また、国民に対し必要かつ十分な国政情報が提供されない中で進められようとしていることについて断固反対します。
 併せて、日本国憲法の平和主義や立憲主義、基本的人権を守る活動に全力を挙げて取り組むことを誓うものであります。

以 上

2021(令和3)年5月3日
埼玉弁護士会会長  髙木 太郎

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