2022.03.10

オンラインを活用した接見交通の実現に向けた議論を求める会長声明

  1.  現在,法務省に設置された刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会(以下「検討会」という。)では,刑事手続きのIT化の議論が進められている。
     検討会では,刑事手続について情報通信技術を活用する方策に関し,現行法上の法的課題を抽出・整理した上で,論点項目として「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」があげられており,この中には被疑者・被告人との接見交通が取り上げられている。

  2.  現在,日弁連では,逮捕段階における公的弁護制度の創設が議論されている。逮捕段階からの充実した弁護活動を可能にするためには,逮捕されて間もない時点における迅速な接見を可能にするため,オンラインを活用した接見交通を実現する必要性が高い。

  3.  検討会における議論では,オンラインを活用した接見交通について,設備や予算などの問題が指摘されているようである。
     しかし,新たな設備の整備等が必要なのは,令状手続のオンライン化をはじめとする刑事手続のIT化全般に妥当することである。
    秘密交通権を確保した上で,身体を拘束された被疑者・被告人が弁護人と遅滞なく通信し,協議するための十分な機会,時間及び設備(facilities)を提供されなければならないことは,市民的及び政治的権利に関する国際規約(14条3項(b))をはじめとして,被拘禁者処遇最低基準規則(規則120−1,規則61−1),弁護士の役割に関する基本原則(原則8)などにも定められているところであり,被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実現するための設備等も当然に国の責任において提供されるべきである。
     刑事手続のIT化の議論は,何よりも被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点で進められるべきである。

  4.  以上の点から,当会は,検討会そして法制審議会において,オンラインを活用した接見交通の実現に向けた議論を求める。

以上

2022(令和4)年3月10日
埼玉弁護士会 会長 髙木 太郎

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