2023.05.03

憲法記念日にあたっての会長談話

  1.  本日、日本国憲法が施行されてから76年目の憲法記念日を迎えました。
     日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義をその基本理念として、私たち国民はこれらの基本原理にそって国政が運営されることを求め、それぞれ不断の努力をしてまいりました。

  2.  昨年2月24日にロシア連邦(以下「ロシア」という。)軍が隣国ウクライナへの軍事侵攻を開始し、ウクライナでは多数の市民を含む死傷者を生じ、また、子どもを含む多くの民間人に対する「戦争犯罪」がなされ、その捜査も行われています。
     戦争は最大の人権侵害であり、市民に重大な危険と恐怖をもたらし、それが現実にウクライナで起き、1年以上経過した今もなお続いてしまっています。
     国連憲章は、すべての加盟国に国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならないとしていますが(第2条第4項)、今回のロシアによる軍事侵攻がこれに違反することは明らかです。戦争の放棄と平和的生存権の尊重を謳う日本国憲法の理念に鑑みても、当会はロシアによる軍事侵攻を強く非難し、国際社会の外交努力により戦争の惨禍がこれ以上続かないことを切に願います。

  3.  また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について感染症法上の位置づけの変更により、その感染対策は5月8日から、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組をベースとしたものに転換されます。
     市民の平穏な日常生活や経済活動は徐々に取り戻されつつありますが、これまでの規制により生活が脅かされ、また、事業活動が著しく制約され、その影響が続く市民や事業者がいます。引き続き、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。
     また、感染者やその家族、医療従事者等への偏見や差別は決して許されません。
     加えて、ワクチン接種に関して派生する様々な問題についても、きめ細やかに対応していく必要があります。ワクチン接種が事実上強制されたり、接種の有無による差別があってもいけません。

  4.  このように、新型コロナウイルス感染症の対応など、限られた財源の中で取り組むべき様々な課題が山積する中でも、日本政府は、昨年12月16日、国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画(いわゆる「安保三文書」)を改定する旨の閣議決定を行い、大幅な防衛費増額の計画を発表しました。
     また、現在、憲法審査会では、憲法9条や安全保障政策について討議が行われています。
     当会では、2015(平成27)年5月28日に発表した「集団的自衛権行使を容認する違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議」をはじめ、歴代政権により長年にわたって繰り返し確認されてきた憲法第9条に関する従来の政府解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強く非難する意見を表明し、実質的な解釈改憲を閣議決定で実行することの不当性を繰り返し主張してきました。
     本年2月8日には、「安保三文書」を改定する閣議決定の撤回を求める会長声明を発出し、国民主権原理及び立憲主義を堅持し、平和主義を擁護する立場から、安保三文書を改定する閣議決定を強く非難し、政府に対しその撤回を求めました。

  5.  本日の憲法記念日に際し、まずは一日も早く、ウクライナにおける戦争が終わることを望み、そのために、日本政府が、武力に依拠するのではなく、日本国憲法が掲げる恒久平和主義、国際協調主義の原理に基づき、関係諸国との間で主体的な役割を果たし、国際平和の維持のために最大限の外交努力を尽くすことを求めます。
     また、日本国憲法における平和主義の下、非核三原則をゆるぎなく堅持すべき立場にあり、私たちは、日本政府に対し、非人道的な核兵器の廃絶に向けてたゆまぬ努力を続けることを求めます。

以上

2023(令和5)年5月3日
埼玉弁護士会 会長 尾崎 康

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