2024.05.02

憲法記念日にあたっての会長談話

  1.  本日、日本国憲法が施行されてから77年目の憲法記念日を迎えました。
     日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義をその基本理念として、私たち国民はこれらの基本原理にそって国政が運営されることを求め、それぞれ不断の努力をしてまいりました。

  2.  2022年2月24日にロシア連邦(以下「ロシア」という。)軍が隣国ウクライナへの軍事侵攻を開始し、ウクライナでは多数の市民を含む死傷者を出し続けています。
     パレスチナ・ガザ地区では、2023年10月7日にイスラム組織ハマス等パレスチナ武装勢力(以下「ハマス等」といいます。)によるイスラエルへの大規模攻撃で、ハマス等及びイスラエル間の紛争が激化し、双方の死者は増え続けています。報道によれば、本年2月末時点で、ガザ地区の死者が3万人を超え、そのうち1万2300人以上が子どもであり、また、医療従事者も多数含まれます。避難生活をする中で子どもや妊婦に飢餓が拡大し、数千人が死亡する恐れがあるとも言われます。
     国連憲章は、すべての加盟国に国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならないとしていますが(第2条第4項)、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻がこれに違反することは明らかです。
     パレスチナ・ガザ地区での紛争に関して、紛争当事者には常に国際人道法及び国際人権法の規則を遵守することが求められ、特に子ども及び医療従事者についてはその保護が求められます。ハマス等及びイスラエル双方が行っていることは、国連人道法及び国際人権法に違反するものです。
     戦争の放棄と平和的生存権の尊重を謳う日本国憲法の理念に鑑みても、当会は、ロシアによる軍事侵攻、そしてハマス等及びイスラエル間の紛争を強く非難し、国際社会の外交努力により戦争の惨禍がこれ以上続かないことを切に願います。

  3.  日本国内においても、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、市民の平穏な日常生活や経済活動は徐々に取り戻されつつありますが、これまでの規制により生活が脅かされ、また、事業活動が著しく制約され、その影響が続く市民や事業者がいます。引き続き、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。
     本年1月1日には、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する地震が起き、建物の倒壊・火災や津波の被害などで、多くの死者が出ました。現在も避難生活を余儀なくされる方が多数いるなど、被災地ではなお過酷な状況が続いています。

  4.  このように、新型コロナウイルス感染症の対応など、限られた財源の中で取り組むべき様々な課題が山積する中でも、日本政府は、2022(令和4)年12月16日、国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画(いわゆる「安保三文書」)を改定する旨の閣議決定を行い、2023年度から2027年度の防衛費を5年間で43兆円と定め、2年目となる本年度予算では防衛費が過去最大の規模となっています。

  5.  当会では、2015(平成27)年5月28日に発表した「集団的自衛権行使を容認する違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議」をはじめ、歴代政権により長年にわたって繰り返し確認されてきた憲法第9条に関する従来の政府解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強く非難する意見を表明し、実質的な解釈改憲を閣議決定で実行することの不当性を繰り返し主張してきました。

  6.  本日の憲法記念日に際し、まずは一日も早く、ウクライナにおける戦争やパレスチナ・ガザ地区での紛争が終わることを望み、そのために、日本政府が、武力に依拠するのではなく、日本国憲法が掲げる恒久平和主義、国際協調主義の原理に基づき、関係諸国との間で主体的な役割を果たし、国際平和の維持のために最大限の外交努力を尽くすことを求めます。
     また、日本国憲法における平和主義の下、非核三原則をゆるぎなく堅持すべき立場にあり、私たちは、日本政府に対し、非人道的な核兵器の廃絶に向けてたゆまぬ努力を続けることを求めます。

以上

2024(令和6)年5月3日
埼玉弁護士会 会長 大塚 信雄

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